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今夜は雪の降る寒い夜となるでしょう。
冷たい風がわたしの隣を通ったとき、家を出てくる前に見た天気予報士の声がどこからか聞こえた気がした。
街は重そうなコートや色とりどりのマフラーを巻いた人たちであふれ返っている。
顔を持ち上げると、上には『どんより』という表現がぴったりの、いかにも雪をたっぷり含んだように重そうな雲が広がっている。
わたしの前髪を揺らしてゆく風に、思わず顔をマフラーにうずめた。
指の先の感覚がない。 手をぎゅう、と握ると、じんじんとちいさく疼く。 ゆっくりと歩いているのに、ブーツはこつこつとせわしなく音を鳴らして、なんだか急かされているような気分になる。 それでなくても冬は街中がどこかそわそわしていて、落ち着かないというのに。 何気なく悴む手を見つめてみる。 腫れたように赤く色づいている指先は、まだしっかりとあの熱を思い出すことができるのに、 つい先ほどまで触れていた気がするしなやかな指を、もう触れることができないなんて、誰が信じられるだろうか。 自分から切り離されたように感覚のない耳は、まだあの言葉を忘れることなんてできていないのに、 つい先ほどまで聴こえていた気がするゆっくりと響く声を、もう聴くことができないなんて、誰が考えるだろうか。 あまりに現実味がなくて、すべてが嘘みたいだ。 人混みの中立ちつくしたわたしの隣を、冷たい風が吹き抜けて、纏わりついてゆく。 欠けたところのなかったあのひとを無くしてしまったなんて、どうすれば理解できるのだろうか。 あのひとの言葉を、未だに忘れることのできていないわたしは、どうすればいいのだろう。 手をのばしても、もう届かない。 |